分科会

セッション

6つの分科会に分かれてセッションを行います。

コンパクト天体分科会

座長団

櫻井 雄太(京都大学/M2)、千葉 公哉(東北大学/M2)、瀧藤 晴(京都大学/M2)、及川 凜(東北大学/M2)、越水 拓海(東北大学/M2)

紹介文

星は白色矮星、中性子星、ブラックホールといったコンパクト天体を残して死に至る。コンパクト天体は星の“燃え残り”と思われるかもしれないが、そうではない。超新星爆発やガンマ線バースト、高速電波バースト、潮汐破壊、相対論的ジェットといった実験室では再現不可能な高エネルギー現象を引き起こすエンジンとなり、星以上に明るく輝く。

超新星爆発からのニュートリノの初検出(1987年)や、ブラックホール連星合体からの重力波の初検出(2015年)により、人類は光以外の“目”で宇宙を観ることが可能になった。さらに、2017年には連星中性子星からの重力波検出に加え、電磁波追観測によるガンマ線バーストやキロノバの観測が行われた。このように、1つのイベントを多様な観測によって明らかにしようとするマルチメッセンジャー天文学が確立しつつある。これを支える近年の技術的な進展として、「富岳」や「アテルイⅢ」に代表されるスーパーコンピュータや、XRISMやEinstein Probeのような最先端のX線衛星、およびIceCubeやKM3Netのような高エネルギー宇宙ニュートリノ観測装置などが挙げられる。電磁波・ニュートリノ・重力波によって伝えられる“メッセージ”を観測・理論・シミュレーションを駆使して読み解くことで、コンパクト天体の真髄に迫っていくことができるだろう!

上述した通り、高エネルギー現象を担う天体の多くはコンパクト天体であり、高エネルギー現象の完全な理解にはコンパクト天体を観測・理論・シミュレーションを駆使して研究する必要がある。本分科会は高エネルギー現象やコンパクト天体にまつわる多種多様な講演・議論を行うための場を設けた。同世代との交流・議論の絶好の機会として、参加者にとって有意義な時間となれば幸いである。

招待講師
  • 岩切 渉(千葉大学)
  • 松本 達矢(東京大学)
守備範囲
  • ブラックホールについて、天体周辺のガス降着の数値計算や実際の観測結果についてはコンパクト天体分科会で扱います。
  • 連星について、中性子のようなコンパクト天体が付随する連星はコンパクト天体分科会で扱います。
  • そのような連星の合体による高エネルギー現象もコンパクト天体分科会で扱います。
  • 一方、恒星同士の連星や連星形成を扱う研究は星間現象/星・惑星形成分科会で扱います。
  • 超新星爆発について、超新星そのものに関する理論・観測についてはコンパクト天体分科会で扱います。
  • 超新星残骸や星間空間における宇宙線の伝搬に関しては、星間物質との関わりが深いため星間空間/星・惑星形成分科会で扱います。
  • 重力波は素粒子・重力宇宙論分科会で扱います。
  • 重力理論の検証や時空構造の研究は素粒子・重力・宇宙論分科会で扱います。
  • AGNホスト銀河やAGNと銀河の共進化については銀河・銀河団分科会で扱います。
キーワード
大カテゴリ
「コンパクト天体」「宇宙素粒子」
小カテゴリ
「中性子星」「パルサー」「マグネター」「ブラックホール」「降着円盤」「ジェット」
「白色矮星」「激変星」「矮新星」「新星」「活動銀河核」「超新星爆発」「ガンマ線バースト」「キロノバ」「高速電波バースト」「潮汐破壊」「連星合体」「宇宙線」「高エネルギー粒子」
「ニュートリノ」

観測機器分科会

座長団

青山 有未来(東京理科大学/M2)、岩垣 大成(東京大学/M2)、井澤 拓海(東京大学/M2)、菅井 春佳(中央大学/M2)

紹介文

現代天文学の研究において、観測装置は重要な役割を果たしています。17世紀のヨーロッパでは、ガリレオ・ガリレイをはじめとする天文学者たちが当時発明されたばかりの望遠鏡を使って天体を観察し、人類の知りうる自然科学の領域を宇宙へと大きく広げました。以来、観測装置は、科学技術の発展とともに進化し、天文学の進展に影響を与え続けてきました。現代では、ALMA、すばる、XRISM、Fermi など電波からγ線に至るまでさまざまな波長における電磁波が観測されています。その他、MAGIC、スーパーカミオカンデ、KAGRA などの稼働により、宇宙線、ニュートリノ、重力波といった電磁波以外の信号さえも天文学の観測的研究に利用できるようになりました。さらに、近年ではデータ科学的手法が天文学に取り入れられるようになり、より良い観測や装置開発に役立てられています。このように、観測装置の発展により、私たちは宇宙をさまざまな側面から見て知見を広げることが可能となり、あらゆる信号を駆使した天文・天体物理学が展開されてきました。

本分科会では、観測装置のハードウェア開発やデータ処理システムのソフトウェア開発、およびそれらに関わるデータ科学について幅広く取り扱います。様々な天文現象をより広く正確に捉え、より良質なデータを得るための観測機器の技術開発は天文・天体物理学の発展に非常に重要です。また、多くの観測手段の統合により天文・天体物理学が進化を続けるなかで、異分野の観測手法や原理を理解することは互いの協調性を高めます。本分科会への参加を通して、異分野間の交流と相互理解を深めるとともに、新たな発想や着眼点を生み、自身の研究に活かされることを期待しています。

招待講師
  • 関谷 洋之(東京大学)
  • 玉川 徹(理化学研究所)
守備範囲
  • 望遠鏡・検出器等のハードウェアの開発や機器制御等のソフトウェア開発、およびそれらに関わるデータ科学については観測機器分科会で扱います。
  • 開発する装置が目指す科学目標に話の重点を置く場合は、その天体や現象に該当する分科会で扱います。
キーワード
大カテゴリ
「ハードウェア開発」「ソフトウェア開発」
小カテゴリ
「望遠鏡」「検出器」「光学系」「読み出し」「データ処理」「データ科学」
メッセンジャー
「電波」「赤外線」「可視光」「紫外線」「X線」「ガンマ線」「重力波」「宇宙線」
「ニュートリノ」「暗黒物質」「CMB」

銀河・銀河団分科会

座長団

伊藤 大将(名古屋大学/D1)、石田 怜士(筑波大学/D1)、清田 朋和(総合研究大学院大学, 国立天文台/M2)、松野 なな(総合研究大学院大学/M2)、藤原 寛太(京都大学/M2)、西濱 大将(大阪大学/M2)

紹介文

私たちが暮らす地球は太陽系の一部であり、その太陽系は天の川銀河に属している。そして天の川銀河のような銀河は宇宙に無数に存在し、それらがダークマターの重力によって結びつくことで、銀河群や銀河団、さらに超銀河団へと宇宙の大規模構造を形成する。つまり、銀河や銀河団は宇宙そのものの進化と密接に関わる存在であり、これらの形成と進化を解明することは、宇宙がどのように誕生し、現在の姿に至ったのかを理解するための重要な手がかりとなる。

しかし、銀河・銀河団の研究はいまだ多くの未解決問題を抱える。例えば銀河では、最初の銀河や星はいつ生まれたのか、銀河はどう進化したのか、超巨大ブラックホールと銀河はどう共進化しているのか。銀河団では、銀河団はどう進化したのか、中心部のガスはなぜ高温なままなのか、銀河団中の銀河はどのような環境効果を受けているかなどの問題に対する答えは未だ明らかになっていない。

これらの問題を解決するべく、近年では可視光や赤外線のみならず、電波、X線、ガンマ線までを総動員した多波長観測が重要視されている。特に、すばる望遠鏡やALMA、JWST、XRISMなどの最新鋭の望遠鏡や衛星の観測は、かつてない性能を発揮し、銀河・銀河団の詳細な性質により迫りつつある。また、今後稼働が予定されているSKAやCTAによる磁場や乱流、宇宙線陽子測定がもたらす新たなサイエンスの発見も期待される。また、シミュレーションにおいても、機械学習の導入により従来の膨大な計算を短時間で処理可能になったほか、TNG ClusterやFLAMINGOなどの大規模シミュレーターが開発され、銀河や銀河団の構造進化をより詳細に再現でき、理論と観測のつなぎ目を果たしている。まさに現在は、観測・理論どちらにおいても銀河・銀河団の新たな側面が明らかにできる転換期である。

こうした観測的・理論的進展が進行中である状況を踏まえ、本分科会では、銀河・銀河団研究に携わる全国の学生が最新の研究成果を共有し、活発に議論することを目的とする。各参加者が自分の専門分野の垣根を超え多様な知識を得ることで、研究の全体像をより深く理解し、今後の研究活動において新たな視点を得る貴重な機会となることを期待する。

招待講師
  • 赤堀 卓也(国立天文台)
  • 上田 周太朗 (金沢大学)
守備範囲
  • 活動銀河
  • 球状星団を1つの系としてみる場合など
  • 超大質量ブラックホール、AGNと銀河の共進化
  • 系外銀河内の星形成あるいは銀河系内のkpcスケールに関連する星形成活動
  • Mpc以下のスケールの構造形成について、その構造をトレースするものが銀河である場合(例えば銀河団、銀河クラスタリングなど)
  • 銀河形成に関連するフィードバック(SN、AGN、 大質量星による輻射など)
  • 銀河/AGNによる宇宙再電離への寄与
  • 銀河間物質と銀河進化の関係
  • 銀河形成シミュレーション、およびその高速化・コード開発
キーワード
大カテゴリ
「銀河」「銀河団」「銀河形成・進化」
小カテゴリ
「銀河系」「矮小銀河」「近傍銀河」「遠方銀河」
「AGN・活動銀河」「球状星団」「銀河群・銀河団」
「星形成(系外 or 系内のkpcスケール以上)」「化学進化(系外 or 系内のkpcスケール以上)」「銀河衝突」「超新星・AGNフィードバック」「ジェット(銀河スケール)」
「ダークマターハロー」

星間現象/星・惑星形成分科会

座長団

鍋田 春樹(東北大学/M2)、北出 直也(総合研究大学院大学/M2)、松永 拓巳(茨城大学/M2)、根津 正大(東京大学/M2)、藤丸 裕生(京都大学/M2)

紹介文

本分科会では、高エネルギーの星間物質から星・惑星形成、太陽系天体、系外惑星、アストロバイオロジーに関する研究を扱います。

宇宙空間に漂う塵やガスである星間物質は、星や惑星系の誕生に密接に関わる存在です。星・惑星の誕生を知ることは我々人類の起源を知ることにもつながります。原子ガスが超新星爆発やスーパーバブル、銀河渦状腕によって引き起こされる衝撃波により圧縮され、熱的に不安定となり、暴走的に冷却・凝縮することで、星形成の母胎となる分子雲ができます。分子雲ではフィラメントが分裂することで分子雲コアが形成されます。その後分子雲コアが重力収縮することで原始星が誕生します。重力収縮の過程で駆動されるアウトフローは星間物質へのフィードバックとなります。また、原始星周りにはガスとダストを材料とする原始惑星系円盤が形成され、円盤から惑星が形成されます。そして、星が最期を迎えると、大質量星内部で合成された重元素を含む構成物質の大半がまた星間物質に還っていきます。これらの過程について、磁気流体計算や化学進化計算などの数値シミュレーション及びモデル計算が行われており、各スケールで理論モデルと観測との整合性が議論されています。また、ALMAなどを用いて原始惑星系円盤の構造や分子雲コアの化学組成が電波で観測されたり、XMM-NewtonやChandraによる超新星残骸プラズマのX線観測がなされたりするなど、詳細な観測結果が得られています。さらにJWSTによる系外惑星の直接撮像や系外惑星大気のトランジット観測が始まっており、系外惑星分野も新たな局面を迎えています。またXRISM衛星によるX線精密分光観測、MMXによる探査、SKAやPLATOなどの将来の望遠鏡による観測など、新しい観測結果から大きな進展が期待されます。

このように、星間物質と星・惑星の形成は関係が深く、観測・理論・探査の各方面から分野を超えた協力が不可欠です。本分科会に参加される皆様には、夏の学校での発表や議論を通じて、分野や手法の垣根をまたぐ視野を持ち、今後の研究活動に役立てて頂くことを期待します。

招待講師
  • 高棹 真介(武蔵野美術大学)
  • 佐藤 寿紀(明治大学)
守備範囲
  • 分子雲、星形成領域、連星進化、系外惑星、超新星残骸は星間現象/星・惑星形成分科会で扱います。
  • 分子雲内に見られる、線状高密度領域を指すフィラメント、及びその分裂を議論する研究は星間現象/星・惑星形成分科会で扱います。
  • 分子雲コア、アウトフローは、そのサイズに関わらず、星間現象/星・惑星形成分科会で扱います。
  • 宇宙線のうち、超新星残骸起源の銀河系内宇宙線など星間物質に関連するものは星間現象/星・惑星形成分科会で扱います。
  • 水素燃焼する質量の星は太陽・恒星分科会で扱います。 超新星自身はコンパクト天体分科会で扱います。
キーワード
大カテゴリ
「超新星残骸」「分子雲」「星形成」「惑星形成」「惑星科学」
小カテゴリ
「メーザー」「PAH」「CMZ」「フィラメント」「分子雲衝突」「星間乱流」「星間磁場」
「ダスト」「ガス」「惑星状星雲」「光解離領域」「HII領域」「HIガス」
「原始星」「褐色矮星」「初代星」「分子雲コア」「太陽系形成」「前主系列星」「アウトフロー」
「原始惑星系円盤」「周惑星円盤」「太陽系内天体」「微惑星形成」「デブリ円盤」
「太陽系外惑星」「巨大衝突」「衛星」「軌道進化」「惑星環境」「惑星大気」
「磁気圏」「惑星内部構造」「惑星地質学」「惑星物質科学」「宇宙塵・惑星間塵」「連星形成」「アストロケミストリー」「アストロバイオロジー」「SFR」「SFE」「数値計算」「JWST」「ALMA」「XRISM」

太陽・恒星分科会

座長団

廣瀬 維士(総合研究大学院大学/M2)、市原 晋之介(京都大学/M2)、戸頃 響吾(東京大学/M2)、永田 晴飛(兵庫県立大学/M2)、藤原 晨司(東京大学/M2)

紹介文

近年の太陽・恒星研究では、数多くの新しい研究が行われています。太陽分野においては、 DKISTやALMAなどの地上望遠鏡や、Hinode 、SDO 、Solar Orbitarなどの衛星、さらには CLASPやFOXSI、SUNRISEなどの飛翔体実験によって、電波からX線までの幅広い波長帯を用いて太陽表面や上空の微細構造の観測が行われ、多くの成果を上げています。さらに、太陽で発生する現象の理解を目的とした研究だけでなく、太陽を一つの恒星と捉えて他の恒星との比較を通じた統合的な研究もなされています。一方、恒星分野では、これまで近赤外線帯域のすばる望遠鏡や Kepler衛星、X 線帯域の MAXI や CHANDRA 衛星、電波帯域の VLA、野辺山45m望遠鏡などが観測に用いられてきました。加えて近年には NICER衛星、TESS衛星、せいめい望遠鏡が観測を開始し、一昨年度は X 線分光撮像衛星 XRISM が打ち上げられ、超高分解能 X 線分光の恒星観測も期待されています。太陽では時間・空間分解した詳細な観測が可能である一方、恒星では多数の天体を対象とした統計的な研究や、太陽よりはるかに高いエネルギーの現象を観測することが可能です。

また計算能力の向上やコード開発の知見の積み重ねにより、高分解能、広範囲、高次元といった今までのものよりも高度な数値計算による研究も盛んに行われています。その領域は太陽や恒星の内部構造から大気、さらにその外側の太陽風や恒星風に至るまで様々な領域に対して行われています。

このような観測および数値計算の研究成果を共有しあうことで、太陽や恒星に対する理解をさらに深めることができます。本分科会では太陽・恒星の幅広いテーマを取り上げ、広い角度からその全体像を把握することを目指します。専門分野を超えた知識の共有や新たな発見が生まれ、本分科会が日本における太陽・恒星の研究をさらに加速させるエネルギー源となることを期待しています。

招待講師
  • 塩田 大幸(情報通信研究機構)
  • 鷲ノ上 遥香(理化学研究所)
守備範囲
  • 個々の恒星の性質を用いた議論(金属欠乏星など)は太陽・恒星分科会で扱います。
  • 連星について、恒星の連星、連星進化や食連星は太陽・恒星分科会で扱います。
  • 激変星(矮新星、新星)、中性子連星やBH連星などの研究はコンパクト天体分科会で扱います。
  • 惑星系を持つ恒星自体に関する研究は太陽・恒星分科会で扱います。
  • 恒星の集団(球状星団や銀河など)は銀河・銀河団分科会で扱います。
  • 白色矮星はコンパクト天体分科会で扱います。
  • 超新星爆発や中性子星はコンパクト天体分科会で扱います。
  • 水素燃焼が始まる前の原始星は星間現象/星・惑星形成分科会で扱います。
  • 水素燃焼しない褐色矮星は星間現象/星・惑星形成分科会で扱います。
キーワード
大カテゴリ
「太陽」「恒星」
小カテゴリ
「太陽・恒星内部」「光球」「彩層」「コロナ」「磁場」「黒点」「ダイナモ」「プロミネンス」「フレア」「スーパーフレア」「磁気リコネクション」「太陽・恒星風」「質量放出」
「宇宙天気・宇宙気候」「太陽観測衛星・実験」「恒星大気」「恒星内元素合成」「化学組成」
「恒星進化」「主系列星」「惑星状星雲」「脈動」「変光星」「連星」「連星進化」「食連星」

素粒子・重力・宇宙論分科会

座長団

林 知哉(大阪公立大学/M2)、竹内 智貴(立教大学/M2)、辻 天太(KEK理論センター, 総合研究大学院大学/M2)、鈴木 幹基(東京大学/M2)、千葉 航(神戸大学/M2)、水野 湧真(慶應義塾大学/M2)

紹介文

現代宇宙論モデルによれば、宇宙はまずインフレーションと呼ばれる指数関数的膨張期から始まります。その後、ビッグバン元素合成、再結合(宇宙の晴れ上がり)、暗黒時代、最初の天体形成、そして宇宙の再電離といった一連の過程を経て、現在の宇宙が形成されたと考えられています。また、このモデルは、初期宇宙における微小な密度揺らぎが非線形な重力崩壊やその他の物理過程を通じて銀河や銀河団へと成長していく過程を説明し、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)や銀河分布など、多くの観測結果と整合する理論的枠組みを提供しています。しかし、インフラトンやダークマター・ダークエネルギーの素粒子的な起源やコア・カスプ問題やハッブルテンションなど大規模構造形成に関する未解決問題もあります。これらの問題は将来高エネルギー加速器や重力波観測、JWSTやCMB S4などの宇宙観測機など幅広い観測で解明されていくことが期待されています。

宇宙の進化や構造形成を探求する上で、重力理論の研究は不可欠です。現在、標準的な重力理論として広く受け入れられている一般相対論は、太陽系スケールの観測結果と高い精度で整合しています。しかし、どの時空領域においても一般相対論が有効な理論とされるかは非自明であり、これを解明することが喫緊の課題です。そのためにあらゆる側面から重力の研究がされています。すでに数多く観測されている宇宙線の解析に加えて、コンパクト連星合体による重力波の解析が盛んに行われるようになりました。これにより大スケールの未解明現象の理解や理論への制限が期待されています。一方、時空構造の幾何学的な解析により、曲率特異点の存在が明らかになるなど一般相対論の数理的な研究も重要な示唆をもたらしてきました。宇宙の誕生や天体の終末などは、既存の重力理論で全て記述しきれないのが現状であるため、一般相対論のみならず、修正重力や量子重力など理論そのものの研究も重要な位置付けがなされています。

また、原子核や素粒子の観点からの理解もかかせません。原子核理論や素粒子論の研究の進展は、恒星内部での核融合反応や宇宙の熱史など、この宇宙の事象を説明する上で重要な役割を果たしてきました。一方で、宇宙に関する理論的・観測的研究がこれらの分野に与える影響も大きく、原子核・素粒子の研究と関わるキロノバや初期宇宙の観測は、重力波等に代表される観測技術の進歩により今後ますます進んでいくはずです。

本分科会では、素粒子論・重力理論・宇宙論が抱える未解明事項に取り掛かる全ての研究発表を歓迎し、参加学生が議論できる場を設けます。幅広いテーマについて活発に議論を行うことで、 本研究会が各々の視野を広げるきっかけとなることを期待します。

招待講師
  • 真貝 寿明(大阪工業大学)
  • 神野 隆介(神戸大学)
守備範囲
  • 銀河クラスタリングや重力レンズ等の宇宙の大規模構造やその時間発展等に関連する問題
  • インフレーションやバリオン数生成などの初期宇宙に関する問題
  • ダークマター、ダークエネルギーに関連する問題
  • ブラックホールやその数理、重力波等に関連する問題
  • 修正重力、量子重力、余剰重力等に関連する問題
  • 素粒子標準模型を超える物理とそれに関連する宇宙論の問題
キーワード
大カテゴリ
「重力理論」「相対論的宇宙論」「観測的宇宙論」「素粒子論」「素粒子論的宇宙論」「重力波」
小カテゴリ
「Einstein重力」「analog gravity」「修正重力理論」「ブラックホール」「数値相対論」
「初期宇宙」「インフレーション」「ダークマター」「ダークエネルギー」「CMB」
「大規模構造形成」「重力レンズ」「宇宙再電離」「ニュートリノ」「量子重力」
「ホログラフィー原理」「相転移」「量子情報」

更新履歴

  • 2025年5月1日 各分科会の情報を掲載しました。
  • 2025年5月2日 去年の情報を掲載していたため、今年のものに差し替えました。
  • 2025年5月4日 素粒子・重力・宇宙論分科会の座長団欄を修正しました。